複雑な音を同時に一個のスピーカーから出せる訳   2019.11.4


オーケストラのように同時にたくさんの音が鳴っていても、スピーカーではそれを再生できます。 

それはとても不思議なことで、オーディオをやっていた当時から不思議だなあと思っていました。 


音楽というのは(音)全て音の振動ですから、それをマイクで拾いスピーカーから同じく振動させ音(音波)を再現する・・・、

ただそれだけのことですが、音を拾ったり出したりするのは、平面の振動版です。 不思議じゃありませんか。

それを、この間の「チコちゃんに叱られる」の番組で解説していました。 どんなに複雑な音でも、音波の波形は唯一つ。 その唯一つの波形を

入れて出すだけのことらしいですね。 100ある楽器も重ね合わせた波形で一つにしてマイクが受け、スピーカーが同じく一つの波形として振動する

と言う事ですね。 そのごちゃまぜの波形を、人間は耳の器官で分離して、バラバラに・・・・、つまりそれぞれに仕分けして脳に送るのだそう・・・。

なるほど、分かったような分からないようなお話でした・・・(>_<)。 

今の人はほとんど縁がありませんが、レコードがありましたね。 それも随分と不思議だなと思っていました。 レコード盤には溝が刻まれていますが、

最初から最後までただの一般の溝ですね。 あの狭い所に、オーケストラが入っちゃうなんて驚きじゃないですか。

でもよくよく考えてみれば、音溝は空気の振幅(音波)をそのままに刻んだにすぎません。 マイクもスピーカーもレコードも、全て同じなのですね。

伸ばすと紐のように一本になる振幅なのだと理解できます。

音の持つ固有の周波数は、全て空気の振動ですから、全て異なる振幅波形を持ちます。 同じものは存在し無い、と言っても過言ではありません。

それでは、どうして同時に押し寄せる違う波形を人は識別できるのでしょうか。 それには、耳の器官の特殊な能力が大きく作用しているようです。



 複数の音源があるとして、アバウトな波形を記します。ここでは6種類。     実際は時間差なく6種類の音は、同じ時間に収まります(重なります)。
       
実際に音はまとめて一つの波形になります。 
どれだけ増えても一つです。
     
     
まとめて出力される一つの波形を、耳と脳で上の重なった波形に戻して、

最初の六種類の波形を理解します。

マイクとスピーカーの役割は、どのような信号(振動)でも残らず記録する

と言う役割を持ちます。 これは、人間や生き物が外敵の発する音を

いち早く聞き取り、身を守るための手段であったとされます。

つまり、単一の音だけが聞こえては困るのです。 同時に色々な音が

聞こえてくる必要があったのです。 それが、耳の役割、聴覚となりました。



[スピーカーほど面倒くさいものはない]


オーディオの最終目的=高忠実度再生は、入力時の波形と出力時の波形が、まったく同じになることを指します。

言うのは簡単ですし、物理上同じ波形にするのは困難ではありません。 いろいろな機器を使い元の波形になるように補正すれば、なんと・・・同じ音になります。

アナログ音源を、デジタル化する・・・つまりジグソーパズルのようにバラバラにしても、波形さえ同じならば元と同じ物が出来ます。 

出来ますが本物ではありません。 クローンであり、虚なるものです。 写真もそうですが、オーディオもデジタルは虚構の世界なのです。

音は空気の振動であり、波形で表すことが出来ます。 これを逆手に取れば、どのような音も再現できます。 ピアノで言えば電子楽器、はたまたエレクトーン。

世の中には、電子音や合成音があふれています。 


オーディオにおいて、最も困難なのはスピーカーだと思います。 耳の近くにあるのではなく、数メートルも離れているのです。 そこで空気を振動させなければ

音は出ません。 最も困難なのは低域で、スピーカーは置かれる場所により良くも悪くもなるじゃじゃ馬なのです。
 
通のスピーカーは下図のような感じ。 これが振動して音になります。     低音を出すためには、箱がいる。箱なしだと、低音が出ない。
箱には概ね二通り。 密閉箱は低音が出にくい。
       
概ね三つのスピーカーを使う。何個あっても大体こんな感じ。      スピーカー間のずれを嫌って、ダブルコーンや同軸型などが作られました。
       ダブルコーン  同軸型2ウエイ
 
 バスレフ式同軸型2ウエイの一例。スピーカーは20センチ。      2ウエイを嫌って、センターにアルミやジュラルミンの振動版を張り付けた物もあった。定位は良いが、センター部分特有の音があり中々難しいユニットだった。
       

ダブルコーンは材質が同じなので、つながりは良いが特有のあばれが生じます。また、大口径だと更に難しく普及には至らなかったです。  

今も昔も主流は、上記のようなセンターキャップ式のシングルコーン・スピーカーでしょう。 キャップ部分の材質次第で音は多様にに変化しました。

多くのスピーカーを使うのは、スピーカーの分割振動を嫌ってのことです。 スピーカーは紙なので、たわんだり歪んだりして、バラバラに振動する現象を起こします。

それで、そのようなことのないように、スピーカーに帯域を分けて振動(再生)させる訳です。 ただこれにも問題は山積しており、簡単にはいかないのです。

オーディオの全盛期には、片チャンネルに20個のスピーカーを使用し、帯域を20分割、それぞれを個別のアンプで駆動するというデモンストレーションが行われました。

多くのスピーカーを使うと、近距離では定位が問題になりますね。 一個のスピーカーでは、再生する帯域が狭い・・・。 まさに二律背反の世界なのでした。


さて、最初に戻って「複雑な音を同時に一個のスピーカーから出せる訳」と言う事ですが、聞こえる聞こえないは別として出せることは出せるのですね。

ただ、オーディオの世界では出せているだけではだめで、聞こえてなければだめなのです。 つまり、そういう意味ではシングルコーンスピーカーは低音と高音に弱いので

正しい再生は難しいと言わざるを得ません。 

多重楽器の使われているオーケストラを録音再生した場合、100台のスピーカーは100様の鳴り方をします。

チェンバロが聞こえなかったり、トライアングルが弱かったり様々です。 生のオーケストラなどの場合は、一度にごちゃまぜの音を収録するわけですが、

他の音楽の場合は全く収録方法が異なります。 たくさんのマイクを使い、楽器一つ一つをバラバラに音録りします。 マルチ録音と言います。

一番最初に書いたイラストと同じことをやります。 バラバラなものを、一つにまとめて録音します。 定位というものはありませんから、人工的に割り振ります。

ポップスも歌謡曲もジャズも、マルチ録音では全て虚像となるのです。

マイク一本のモノラル録音や、二本のステレオ録音こそが、まともな録音方法なのかも知れません。 

だいぶ本題から外れてしまいました・・・(>_<)。


[スピーカーとは違うイヤホンやヘッドホンの世界]


色々と述べてきましたが、オーケストラを再生しようとする場合・・・、音楽全般に言えますが、音を出す方法は何通りかありますね。

箱に入ったスピーカーシステム(天井埋め込みも箱です)。

ヘッドホン

イヤホン

概ねこの三通りだと思います。

ヘッドホンは、最もスピーカーシステムに近い方式。 大きく異なるのは、イヤホン。

いずれも、音場は脳内にできます。  スピーカーシステムのように、前方に音場が出来ることはありません。

スピーカーシステムのように部屋の状態に左右されることがなく、耳に近いだけに微細な音も聞き分けることが出来ます。

これらが人気なのは、スピーカーシステムのように場所を取らず、音質の比較がたやすく出来ることだと思います。

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