補聴器とは

補聴器は聴力レベルが40デシベル以上の人に推奨されています。40デシベル以下では日常の生活に不便はさほど生じないと言っても良いからです。

現在の補聴器には、電気回路がアナログの物とデジタルの二種類があります。アナログ方式は音の増減は出来ますが、特性は設計の段階で決まってしまいます。これに対し、デジタル補聴器は、アナログ信号をデジタル化しそれぞれの帯域の音圧を個別に増減できるように複数のアンプを搭載しアナログに戻して出力します。6チャンネルと言えば6つのデジタルアンプであり、耳の特性に合わせて出力を調整できます。
チャンネル(アンプ)数が多い程高価になります。デジタルですのでパソコン等外部機器に接続して調整ができます。

特性の調整のほか、ノイズのコントロールや風切り音のコントロール、過大入力のシャットダウン、マイクの感度の調整など様々な調整が可能です。
マイクの指向性やハウリングの制限などはデジタルでなければ実現することは出来ません。
良い事ばかりのようですが、実際には時間をかけてカットアンドトライで調整しなければ本来の機能を生かすことは出来ません。何度も購入店に足を運ぶ事になります。この作業をフィッテングと言い、何度も何度も繰り返すことがとても大切な作業なのです。

補聴器は普通程度(50デシベル)の音が入った場合、最大で70デシベル程度まで増幅します。つまり、聴力レベルが70デシベルの人には、最大では十分な効果と考えられます。聴力レベルが100デシベルの人なら、30デシベルまで改善されると言う理屈ですが、実際はそうではありません。

なぜならば、増幅すると言うことはノイズも含めて全ての音が均等に増幅される事を意味するからです。また、アンプは最初から最大出力を出していますので、歪がオーディオ機器とはケタ違いに多いのが普通です。オーディオアンプの高調波歪は0.01%程度と無視できるほど低いのですが、補聴器は
高出力タイプでは4%~10%程度とケタが違います。

  代表的なデジタル補聴器の周波数特性です。
黒線は高・重度用の補聴器で、価格により特性が変わることはほとんどなく、高域がストンと落ちるのが高出力時の特徴です。200Hzから6000Hz位までをカバーしています。
青の線は中程度用で、出力が抑えられる分高域は8000Hzまで伸びています。初期の高出力補聴器は高調波歪が10%でしたが、最近の品は4%から5%と低く抑えられています。
しかしながら、オーディオ機器のレベルには程遠いのが現状です。

パソコンのCPUはマザーボードに抜き差しするために、4~5センチの大きさですが、補聴器のそれは1センチに満たない大きさになっています。
現在私の使っている補聴器は、トランジスタ数が4500万個で数年前の800万個より格段に向上しています。
トランジスタ数は数年前のパソコンのCPU、デュアルコアと同程度でWindowsビスタ程度のパソコンが入っていると考えて良いのです。
デジタル補聴器の価格が途方もない程高いのは、ここに理由があります。
ただ小さいのではなく、とてつもなく高性能な頭脳が埋め込まれているのです。


従来は補聴器は、人の声を聞くための物と理解されてきました。上図に分かる通り、人の声に近い周波数1000Hzが概ね盛り上がるよう最大出力になるように設計されます。これは1000Hzを頂点としたかまぼこ型の人間の聴力曲線と同じであり、基準となっています。

   
図は平均聴力曲線です。ピークが2000Hzとなっています。
加齢により感度は異なりますが、曲線のパターンは変わりません。

従来の補聴器はこの1000Hzから2000Hzを増幅して聴力を補うのが主でした。これでは、高域増幅による衝撃を防ぐためにハイカットフイルターが装備されていました。過大入力時には音量を下げるのですが、動作のタイミングは俊足とはいかずかなりのタイムラグがありました。一瞬聞こえなくなるのです。

現在は不要な騒音を識別し減少させ、程度な生活騒音を残し高音低音共に再生能力を高めてきています。

それでは、高性能な補聴器ならば
健常者と変わらない聞こえが得られるのでしょうか。


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