タカオカ靴店


tokyoが勤めている銀座。
そのビルが林立する街に小さな靴屋さんがあります。

知る人ぞ知る靴屋さんです。店主はご老人であり、いつもひとりで店番をしています。
この店はもう数十年にわたりここで商いをしているらしい。
この店の存在を知ったのは、もちろんtokyoが銀座に勤めるようになったから。
地域の商店会の会長をしていたこともあったと聴きます。
靴は在庫が1足。
1足になるとまた暫くすると2足に増えます。10年程前は少なくとも5〜6足は有りましたが、
年々数が減って来たのです。この2足程度の状況は5〜6年以前から続いていたと記憶しています。

お店は流石に年代を感じる古さですが、当然のごとく靴はピカピカで、店頭より少し引っ込めて陳列しています。
がらんとしたショーケースとポツリと置かれた靴は、妙なアンバランスを感じさせます。靴はオーダーメイドなので、
店頭の靴は出来上がりの見本なのだろうと思われます。

tokyoは仕事柄毎日のようにこの店の前を通ります。もう10年近くも見続けています。
銀座で数十年に渡り店を構えるのは容易なことではありません。
金儲けに走る、そんな利益ばかり追求する世の中。そんな世の中に生き方を変えない人も居るのですね。

霞のように消えていくものは非常に多い。
ひとつ所で変らぬ営業をし続けるのは非常に難しいことでしょう。

かの有名な銀座ワシントン靴店は一階をユニクロに貸し、地階での営業となってしまいました。
銀座本店としては、寂しい限りです。

このタカオカ靴店は、銀座の店の在り方というものを考えさせてくれます。

初志貫徹。

小さな店だけど、その心意気は決して失われることはないでしょう。大きな店だから良いというものではありません。
また、小さな店だから良いというものでもありません。
継続するということは、とても大切なことなのです。

守り続けること。
あなたはそれを持っていますか。

大切なもの。
あなたはそれを持っていますか。


「後  記 2011年」

残念ながら、2011年店は閉店されました。過日、町内会より訃報がありました。もうあのご老人の姿を見ることはできません。
銀座の歴史が静かにまたひとつ幕を下ろしたのです。

つづく                                                             東京写真カメラマンのたわごと