時計台、消えたラーメン店




銀座には勤め人用のお店とそれ以外のお店がはっきりと分かれて存在しています。
ええ、飲食店のことですね昼の。

銀座のランチは表通りなら千円は下らない。ちょっと高級なら三千円はするでしょう。
毎日勤めている人には辛いですねえ。それで、裏通りにある小さな店はランチタイムには凌ぎを削るのです。

そんなラーメン専門の店「時計台」が、一年ほど前に姿を消しました。多分2008年の冬頃ですね。
この店の隣も実はラーメン店で、こちらはタン麺が有名で昼時は行列が絶えません。
隣にある時計台は行列は皆無。されど、そこそこに人気があったのです。
何故故行列ができないかと言うと、それは一度食べればすぐに解ります。いえいえ、まずくはありません。
それなりの味と、すこぶる評判は良かったのです。なーぜか。

量ですね。量が多いのですよ。多少オーバーではありますが、
ラーメンどんぶりから富士山のようにもやしが立ちます。麺も食べやすいが普通より絶対に多い。
おまけに決して温くない。つまり熱々。
だもんで、一度行くと。あ〜あ、量がねと言われてしまうノデス。
もちろんレディスというのもありますが・・・。まあこれがいわゆる
普通で麺が他の大盛相当、中盛りは二倍、大盛は四倍とかいう。間違って頼むとちょっとどころか
間違いなく麺と戦闘状態になるノデス。これを頼んだ以上は必死で食べなければならないのです。
食べても食べても少しも減らない凄さがありましたね。よって、大食らいの者御用達となるのです。
残念ながらメニューはラーメンとカレーだけ。チャーハンもなければ餃子もない。
もちろんタン麺もなければレバニラもない。もう、選択肢が非常に少ないのでしたネエ。

普通のどんぶりに並々とスープ、盛り上がるもやし。まあかなりの確立で欠けたどんぶりは廻ってきます。
しかも、店は男二人の色気なさ。
しかし、妙にあのラーメンが食べたくなるのですよ。懐かしいのですよ。何処に行っても、あの柔らかく食べやすい麺
にお目にかかることはありません。私的な意見を言わせて貰えば、量の少ない店は失格だと思っています。
もちろん小食の人もいるわけで、そういう人はまあ外食はせずに弁当を持参するのがサラリーマン世界です。
味についてとやかく言う御仁も居ますが、そういう人ほど当たり前のラーメンは食べたことがなかったりします。
普通というのはまずいということではありませんし、スープや麺にl拘っているからうまいということも本当は
ありません。
もうこの店はないのですから、メニューを詳しく書いても金額を載せても意味がないので止めます。
男二人で切り盛りしている店ですが、大体麺を作る人と注文を聞く人はいつもきまっています。
たまに入れ替わっていたりするとかなり気になったものでした。微妙に何かが違うのでしたネエ。
じつは、この店がやたらと量が多いと知ったのは最近になってからです。通っていた当時は全く気にせず、普通に
みそラーメンを頼んでいました。微妙に盛り加減が違うのが凄く気になってましたけど。
隣と違うのはクーラーがあること。

この隣のお店(行列の店ね)も量は半端ではありません。タン麺こそ普通だが、他は量が多いのです。
じつは隣の店はクーラーがないのです。店は開けっ放し。
少し離れた所にも中華店があるが、ここも半端ない。ランチセットは気合を入れないと残す

もう一軒近くにランチ定食を提供している店があるけれど、最近量が少なくなって残念。
前はトンカツがかなり大きかったびっくりする位、今は普通になってしまった。御時勢ですからネエ、解らないでもないけど。

こういう具合に、銀座には勤め人向けの店が結構ある。とはいっても減りこそすれ増えることはありません。
店が古かろうが、今時冷房がなかったりしようがサラリーマンの味方であることには少しも変わりがありません。

少なくとも数十年はやっていた店がなくなったのです。またひとつ当たり前のラーメンの味が消えたのです。
勿論、大盛を良しとする拘りの職人も消えていったのです。

そういう意味で、銀座は凄い街だlと思う。本当に思う。

二人三脚で灯した時計台の明かりは、もう灯ることはない。

多くの人に様々な思いを与えたことは、紛れもない事実でありましょう。
そんなお店がとても羨ましく思われます。食の何たるかを教えられたのですから。



つづく                                                                      TOYOAKI