1970年オーデイオ回顧録    2020.6.28


現在は、スピーカーシステムを自作することはありません。 限られたメーカーしか、ユニットを発売しておらず選択の自由が少ないことも理由です。

スピーカーシステム自体の音も、飛躍的に向上しています。 敢えて、自作を組む必要性もないのかも知れません。

オーデイオの黄金期、それはスピーカーシステムそ向上時期と重なります。 市販品のスピーカーユニットは単体で発売されることも多く、

自由にシステムを構築することが出来ました。 そんな頃、筆者は下記のようなシステムを構築し日夜奮闘していました。

秋葉原に600回通う歴史は、ここからスタートしたのです。


1970年   

フォスターBF203、ナショナルEAS20PX-10×2、フォスターBF103SR、 
アトミックスHT-02
パイオニアPM12F×2、ナショナル8HH55×2
この他にアトミックスHT-02の9スピーカーユニット、1システム。
   
ナショナルEAS20PX85、ナショナル8HH55×2、
パイオニアPAXA-20の4ユニット、2スピカーシステム。
     右

箱の容量は180リットル。
左は分厚い音。常に左側からグレードアップをしたので、
当然ながら一番バランスが取れていたシステムである。
 
PAX20Aは全域で使用。PT8Aは超高域用。バスレフはダンプドバスレフで使用。非常にクールな音がしたシステム。 

1970年3月7日の試聴・測定リポート(自己システムの評価)

   
試聴にはテープ及び周波数レコードを使用。 機材は今から考えると貧弱そのものだが、四畳半や六畳にも満たない世界。
使用機材は変化しているので、他項を参照ください。

低音

ヘッドホンの低音とは比べ物にならないほど、分解能が良い。低音の上限部に軽いディップがある。300Hzが共振している。
重低音
全くヘッドホンとは比べ物にならない。分解能が良く、ベースの音階がはっきりわかる。70Hzが全くフラットに出る。ダクトを塞いだ方が音にしまりが出る。
中音
豊かでつながりが良い。柔らかく、音はやや後退するがプレゼンスは右とは比べ物にならない程良い。声が自然な感じに出る。
高音
奇麗な、線の細い音が主である。右よりは伸びがない。4000Hz~6000Hzにかけて音圧が下がる。聞きやすいが、アタックはあまりあまり強くない。
超高音
伸びがない。音は澄み切っている。
 
低音

すこぶるクリアーで、やや硬めである。ドラムのアタックが強烈。
量感が今一歩足りない。音は前向きに出てくる。
重低音
重低音の成分はあるがかなり落ちている。
解像力が悪いので、比較的柔らかい音に聞こえる。3~4db位増強すれば何とか間に合う。
中音
かなりクリアーでやはり硬さがある。分解力が優れている。
音にやや厚みを欠く。声は前に出てくる傾向がある。
高音
分解能がすこぶるよく、伸びもあり相当の高い音も弱く出ない。シンバルのアタックは強烈で、やはりクリアーの一言に尽きる。聞いた感じでは、過渡特性が、かなりいいように感じる。
超高音
かなり伸びている。もっと繊細さが欲しい。
 1971年中期  

フォスターのスピカー二個を取り外し、パイオニアのウーファー
PWA20とコーラルの25センチウーファー10L50を入れる。 
   
新たに箱を購入して、ナショナルのウーファーEAS20PL90NAと中音域にパイオニアのスコーカーPM12Fを入れる。コンクリート板を下に敷く。ツイターはオンキョーのTW8Aを追加。
     
詳細調整前    
 
全体的なバランスは良いと思うが、心持ツイターのレベルを上げたい。低域の厚みがやや足りないので、音像が硬くなる傾向が聞かれる。ギターの音に、温かみが足りないが音像は確かであった。シビアーに言うと、どこかの周波数が調整の都度、消えてなくなってるようなバランスに聞かれる事がある。これが固有の癖に聞かれるのだろう。子音はあまり強調されない。ノイズの分布はかまぼこ型で、明らかに低域が損失している。    1971.5.3
 
全体的なバランスは明確に、ツイターに重心が傾いているが、割合中域も充実しており、中域の不足よりは高域の出過ぎに心が行くであろう。楽音等では効果的であるが人声当では多大にはスキーになる。3WAYは中低域が厚く、ともすれば技術的に薄くなる中域を良くつかんでいるが、音の透明度はそんなにあるようには聞こえない。ツイターは意識的に上げてあるが、クロスオーバーが高いので品位は高く、弦の再生はこの上もなくなめらかである。低域は不足である。
従来の箱は音のバランスは凹 型であり、中域の育ちの悪さは致し方あるまい。弦楽器は粗さが残り良くないが、JAZZではシンバルが品の良さを出し低域の透明感と共に最高であろう。音の粒が良く立つが、いかんせん中域が無いので、と言った所である。20PX85は低域を除きA20に準ずるが、高音の質はA20より良く感じられることもある。   1971.5.3
詳細調整後    
こちらは多少の調整のみでほとんど理想の音を出すに至ったのでずっと使用した。最低音の伸び、中音の充実、高音の柔らかさ等文句なく、フルレンジのような大人しい音がした。FM東京の「もこ」の声などリアルで、スピーカーの後ろで人が喋っているような気がしたほどだ。ギターの音も非常にリアルであったと思う。   20PX85は最初は全域で使用。中期では全域使用をやめて、
6dbで高域をカットした。追加したオンキョーのTW8Aは定位ツイターとして2dbレベルを上げて使用。後期には大型の箱を購入。PM12Fを追加して中域の充実を狙ったが、あまり効果はなかった。こちらは左に比べ高域が良かった。多少中域が弱かったことを除くと、文句なしと言うところだったと思う。
 1972年前期  

ナショナルのツイター5HH17を追加。
どうしても使いたいスピカーシステムを復元するユニッットだった。
何もせずとも5HH17の高域は良く通るので、2db程下げることとある。
 
 
大型箱購入のため、それまで使用していた中箱を友人に払い下げる。パイオニアのツイターPT8Aを2個追加。
コーラルのフラット6を自作の箱に入れる。ダクトは塩ビ管を加工したもの。
大型箱にはそれまで使っていたパイオニアのPAXA20を低音専用に、中域にはパイオニアのPM12Fを使用。この状態ではバスレフにしておらず、低域が不足がちなので注意とある。小型箱の20PX85は高域を12db下げると書いてある。バランスには苦労したようだ。 
     
     
1972年中・後期    大箱を購入。
     
① 20PX10のツイターは20db位下げる必要がある
②20PX85は6db下げて、PM12Fと同じにする
③TW8Aは定位ツイターであるので2db高めにセットする
④5HH17はレベルを下げること
⑤右は中域、低域が不足がちなので注意すること
⑥左の調整が終わってから、右の調整に移ること
                                   1971.1.31
   フラット6は中高音。 20PX85は全域(当初)。TW8Aは高域。
PT8A は超高域。PAXA20は低音として使用。

レベル調整、クロスオーバーの設定は、計算の上カットアンドトライで行った。コイルは計算の上、手巻きをして制作している。
 1973年前期   部屋を移動したので狭くなり、左右を入れ替える。

左は一挙に中域が弱くなってしまった。この状態では大箱に中域のPM12Fが入っているが、最初はなかった。
またパイオニアのPAXA20が入っているが、これもまた最初はなかったのである。  ナショナルのウーファーEAS20PL90NA
パイオニアPM12F×2 パイオニアPT8A×2 ナショナル5HH17
パイオニアPAXA20 フォスターのFE163SRの8スピーカー。
 
オンキョーTW8A  パイオニアPT8A×2 パイオニアPM12F×2
ナショナルEAS20PX-10×2 パイオニアPAXA20
コーラル10L50  右チャンネルは、20PX10の配置が上段に、パイオニアのPW-A20は下段に移動した。
     
     
 1973年中期    

引っ越しで部屋が狭くなったので、大型箱を左に移動。どうやら、その後4個箱は解体したらしい。
右のシステムは低音が酷く足りないとして、全体でも低音が出なくなったとしている。この部屋に合わす作業は少なくとも1年はかかってしまうと書いている。もうかつての音は蘇らないと嘆いている。
確かに、4個箱の存在は圧倒的であったと思う。今見ても、確かに非常に貧弱なシステムに思える。 
  大型箱に入っていたパイオニアのPAXA20は、そののちナショナルのPL90NAの入っていた箱とほぼ同様の箱を買い、そこに収まる。4個箱を解体したので、それに入っていたコーラルの25センチウーファーを大型箱に入れる。
こののち、1974年にはまた引っ越しをする。
     
スペースの都合でスピーカーを移動。これにより全体に低音は出なくなった。 特に右は、ひどく足りないように思われる。バランスを設定しないうちに左右を入れ替え。現在に至っている訳である。 完全なスピーカーボックスがないとスピーカーは鳴らない。しかし今は、そのBOXさえ
どうにもならない状態にある。同じユニットでも部屋により全く違った再生音になってしまう事実は、オーデイオの最も困難な問題であると言える。この音を部屋に合わす作業は、早くても一年は掛かってしまう。
もう、イザベルのギターは蘇らないのである。あの温かく柔らかなギターの響きは、もう再生することは不可能であるのだ。 1973.3.15
 
使用しているスピーカーユニットは安い物ばかりでした。 しかし、価格の差は材質やマグネットであり、大音量で使用するのでなければ基本的に

大差ないのが当時の事情でした。 コーンユニットの場合は、コーンの材質が音の腰に影響を与えました。 マグネットは制動に大きな影響があります。

現在は強力なネオジウム磁石が出現し、スピーカーの概念は大きく変わっています。 


 当時のスピーカーユニットは大きな箱に入れ、バスレフも有効な値セッティングするのが大変でした。 かくして、お金に余裕のある人たちは、

スピーカーを家ごと設計するようになって行きました。 スピーカーシステムはホーン型が一番、と言う伝説はその頃に発生しました。 

アメリカでもないのに、ウサギ小屋なのにアルテックだJBLだと、ひた走ったのです。


JBLのLE8Tは、ちょっと待ちなさいシングルでもこんな音が出せるのだよと、世間を驚かせました。 

言うまでもなく、最初から2WAYや3WAYを組むのは邪道です。 先ず、シングルコーンから初めて、何が足りないのか何が多いのかを知る必要があるので

す。 そうでないと、バラバラの音になってしまいます。 アッテネーターの定数なども、自己システム用に計算して求めなければ役に立たないのです。


良く計算されたスピーカーシステムは、点音源になります。 2WAYでも4WAYでも、あたかも一個のスピーカーユニットから音が出ているように鳴ります。

沢山のスピーカーユニットを使うのは、非常にセッティングが難しいです。 何年もかかる程、カットアンドトライしなければなりません。

それでもやるのは、どんなに優れた市販品スピーカーシステムを購入しても、自分の部屋で思い通りには鳴らないのを知っているからです。


1965年~1971年頃のオーディオ(スピカーユニット)はこちら

 複数スピーカーユニット使用の、インピーダンス問題
 
当時は片チャンネルに7個から9個のスピーカーユニットを使用していました。 この複数接続で問題になるのは、インピーダンスです。

接続には、並列接続と直列接続があり、また直列接続した後に並列接続すると言う手法があります。 直列接続では、インピーダンスは変化しませんが

並列接続ではインピーダンスが半分になります。 インピーダンスはスピーカーの能率と関係し、インピーダンスの低下はアンプ・スピーカーユニット共に

良くありません。 スピーカーユニットを焼損させてしまいます。 アンプもショートしてしまいます。 


とは言うものの、各々のユニットに個別に6dbや12dbのネットワークが存在して、帯域が制限されています。 つまり、同じユニットの複数接続ばかりではあ

りません。 使用しているスピーカーユニットのインピーダンスは、全て8オームだったと思います。 ツイターの二個使用や、同じユニッの二個使用は

直列につないでいたようです。 色々変えているので、それも今となっては定かではありません。

実際の総合インピーダンスが4オームを切っているのか、実際の再生時にどういう不可になっているのかは良く分かりません。


当時のシステム、サランネットの状態。    
     
     

BACK